前回は、用件のない時に書く手紙こそ、
相手の心に届くという話をしました。(Lesson1

では、実際に手紙を書こうと思った時、
何が一番抵抗になるのでしょう?

僕の経験からいうと、手紙の"書式"というもの、
あれにこだわっているとなかなか書けない。
「拝啓」で始まったら「敬具」、「前略」なら「草々」で終わる……
最初は時候の挨拶から入って……
そういう書式には、こだわらなくていいと僕は思います。

読む側からすれば、儀礼的な言葉が多いとかえってその部分は飛ばされてしまう。 用件はなんだろう? と思われがちなんです。

たとえば、「昨日はごちそうさま」から入ってもいいし、
「何々がうれしかった」でも「あの店の餃子は旨い!」でもいい。
"自分の一行"が、いま目の前にはいないけれども手紙の向こうにいる
"あなた"に対する呼びかけになるんです。

メールがなぜここまで広がったかというと、話し言葉で書けたからでしょう。
手紙も、もっと話すように書けばいいんです。
手紙にはメールと違って絵文字はないけれど、そのぶん、
空白なのか絵なのか、絵文字的な遊び心を使えばいいと思うんです。

ということは、当然、どのくらいの長さの手紙が適当か、
などと考える必要もないと思う。
1行でも3行でも、便箋10枚にわたっても構わない。
一番大事なのは、自分が言いたいことを出すことです。
「もう春ですね」というだけを伝えたい人が、
そこに水増しする必要もないでしょう?

つまり、自分の言いたいことが長さなんですね。

同じような意味で、僕は、手紙を書くときは手書き派です。
実は作詞をするときも、絶対に手書きなんですよ。
それはたぶん、言葉と言葉の間、1行置いてから考える時の、
ペンをもった"間(ま)"が好きだからです。
直筆には、それが正直に出るんですね。

たとえば、「川」でも力強い川と弱い川、大河も小川もいろいろある。
でも、パソコンで書くと川は川。手書きならその違いが出る。
僕も映画のシナリオとか脚本とか、構成が重要な原稿はパソコンを使いますが、
もっと感情を伝える文章なら手書きのほうがいいと思う。

手書きを薦める理由はもう一つあって、
手紙を書くときの心構えとつながっています。

上手にまとめようと思ったり、推敲に推敲を重ねたら、
便箋が何枚あったって書けない。
でも、いいんです。誤字脱字があっても、
極端に言えばぐしゃぐしゃとインクで消したっていい。
その瞬間、たしかに迷っていたんだな、と相手に伝わる。
それが、手紙を書いた人のその時の思いなのだから。

それを含めて、思いつくままに書くことです。
僕が思うのは、儀礼的でない手紙は絶対に推敲しちゃいけないし、
書き直しちゃいけないもの。ときには、
ああ、これ、あまりに書くことを職業とする人間として恥ずかしいな、
と思うこともあるけれど(笑)、そのまま出す。
なぜなら、その時の精神状態は、たしかにその手紙そのものだから。
それに推敲を重ねてしまうと、
ここ、もうちょっと泣きを入れとこう(笑)とか、
あざとくなってしまう。

だから今回のマトメは、「思うことを話すように書こう」
「自分の言いたいことが長さなんだよ」
そして「絶対に推敲しないこと」。
それが、思いを伝える手紙の心構えだと思います。〈談〉

 

 
 
 
 
 
    
   手紙は愛と同じ〜。 ☆NEW
 
   
   下手でいい。言葉より思いを伝えよう。  
 
 
   手紙の「幸福論」。
 
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